WHATISAI付録

付録
機能スナップショット(2026)と、失敗カタログ

ここは、すぐ陳腐化する情報を、あえて隔離した棚です。本文(堅い地盤)と混ぜないために分けてあります。 使うときは必ず、各機能の最新ドキュメントで裏を取ってください ── ここは2026年なかばの「現在地」のスナップショットにすぎません。

⚠ この付録の機能名・数値は2026年時点。Claude Code は更新が速く、仕様は変わります。点線の語はタップで意味が出ます。

スナップショット①Claude Code を、4本のレバーで地図化する

本文で出た Claude Code の機能を、どのレバーの実体かで整理します。「機能を覚える」のではなく「どのレバーを引く道具か」で捉えると、新機能が出ても迷いません。

機能レバー役割
CLAUDE.md①文脈常設の指示・規約。ただし一軍だけ(厚いほど弱い)
/compact①文脈長い会話を要約圧縮。コンテキスト腐敗の前にリセット
skills(.claude/skills/)①文脈必要時だけ読むドメイン知識。軽さと専門性の両立
hooks(Stop / PreToolUse)②検証 / ④舵検証ゲートや危険操作のブロックを、仕組みで強制
サブエージェント(.claude/agents/)③分割 / ②検証役割別に文脈を隔離。生成者≠評価者を実現
plan mode④舵 / ①文脈探索と実装を分離。計画を人が承認してから実行
permissions(allowlist)④舵触れるツールを制限。最小特権
MCP(土台)外部ツール・データの接続規格

スナップショット②時点依存の現在地(すぐ古くなる)

項目2026年なかばの現在地注意
用語の status"harness engineering" は新興(Hashimoto/OpenAI 2026/2)。Karpathy は agentic/context engineering、Willison は vibe engineering標準語は未確定・流動的
コンテキスト腐敗の閾値公称ウィンドウのはるか手前から劣化(Chroma 2025、18モデルで確認)具体的な閾値は不確定・モデル依存(議論中)
並列エージェントKarpathy が複数の並列エージェントを指揮、DHH は2モデル並走と報告体数の一次ソースは曖昧。調整コストと割に合うかは別問題
ベンチ(SWE-bench 等)上位は拮抗・頻繁に入れ替わる足場・評価設定で各社の報告が食い違う。単一数字を信じない
エージェント間規格MCP が普及、A2A 系が黎明期標準化の途上

失敗カタログ舵を手放した、実際の事故

「自分は大丈夫」と思う前に。これらは才能や運の問題ではなく、ハーネス(特に検証と舵)の欠落で起きました。各事例に、どのレバーが抜けていたかを添えます。

Lovable ── 認証ロジックの逆転(1.8万件超のレコード漏洩)AI生成アプリで匿名ユーザーに全アクセスを許可。別途、(API認可の不備)が48日間未修正だった例も報じられた。抜けたレバー: ②検証(高リスク領域の独立レビュー)+④舵(人間ゲート)
AI生成コード ── 45%がOWASP脆弱性100超のLLMで検証(Veracode)。XSS 86%・ログインジェクション88%の失敗率。AI支援コミットはシークレット漏洩率が人手の約2倍との調査も(GitGuardian)。抜けたレバー: ②検証(セキュリティの独立検証)
"slopsquatting" ── 幻覚パッケージの悪用LLMは存在しないパッケージを幻覚する(商用モデルで約5%、OSSモデルで2割超)。攻撃者がそれを先回り登録。抜けたレバー: ④舵(新規依存の人間レビュー)+①文脈(公式ドキュメントの接地)
"doom loop" ── 再現不能なバグの無限ループデータ層・ロジック層・UI層の整合が崩れ、修正のたびに別のバグが出る。最初からやり直すしかなくなる例も。抜けたレバー: ③分割(小さく刻む)+②検証
発展発展:なぜ『自信満々の流暢さ』が、人間の精査を緩めるのか▼ 数式が苦手な方は飛ばしてOK

オートメーション・バイアス:AI生成コードは文章が流暢で整然としているため、人間は「能力がある」と錯覚し、通常より少ない精査で承認してしまう。これは認知の罠で、コードの質とは無関係に起こる。

対策は、第3章・第5章の結論そのもの ──人格や注意力に頼らず、仕組みで検証とゲートを強制する。流暢さに惑わされる前に、エビデンス(テスト出力)を要求し、高リスク領域は別エージェント+人間で二重に見る。「自信満々に見える出力ほど疑う」を、習慣でなく hook にする。

出典: Veracode "GenAI Code Security Report"、GitGuardian "State of Secrets Sprawl 2026"、The Register / TNW(Lovable)、"We Have a Package for You"(arXiv:2406.10279, USENIX Security 2025 / slopsquatting)。数値・事例は時点依存。

付録のひとこと

具体は古くなる。レバーは、古くならない。

── この付録が古びたと感じたら、それは正常です。そのとき、本文の4本のレバーで、新しい現在地を自分で読み解いてください。